皆さん、おはようございます。
音楽制作の現場においても、そうでなくても、「防音」という概念とは深いお付き合いがあることでしょう。
「音を遮る」ということは、生活音を外に漏らさない、外からの音を通さず居内の静寂を守るなど、大切な役割があります。
防音にはいろいろなアイテムがあるけれど…
単純に壁を厚くしたりシャッターを閉めたりする物理的なものから、遮音カーテン、遮音材、石膏ボードなどといった音を遮ることに定評のあるものまで様々ですが…今回採り上げるのは「吸音材」です。
吸音材とは
読んで字のごとく、音を吸うことで室内の音を静かにする役割を持ちます。レコーディングスタジオで壁いっぱいに貼られている、ギザギザモコモコしたものです。
吸音材について、詳しく見ていきましょう。
吸音材は主に、壁面などの硬い素材を覆うように貼り付けられています。
スピーカーなどから出た音は、十分な音エネルギーをもって吸音材の貼られた壁面に向かって飛んでいきます。
表面部分
吸音材の表面はギザギザしています。音が吸音材にぶつかることで、そのギザギザした表面によって、多少エネルギーが分散します。
内部部分(1)
分散されずに残った音エネルギは、そのまま吸音材の中に突入しますが、多孔質な素材なため、吸音材の内部でもある程度の音エネルギーが吸音材の中で分散したり、吸音材を揺らしたり熱エネルギーになるなど、音エネルギーを減衰させる効果があります。
また、中は多孔質なため、分散した音は吸音材の中で迷い、幾度も跳ね返るうちにそのエネルギーを失ってしまいます。
それでもなお、残ったエネルギーは吸音材の中を突き進み、吸音材の先にある壁などの硬い物質に到達します。
壁面
吸音材を抜けて到達した音は、壁にぶつかります。
ぶつかった音は、ある程度は壁を抜けて外に、残りは反射して再び吸音材の中を抜けることになります。
内部部分(2)
反射した音が吸音材を通る時、内部部分(1)と同じように音エネルギーの分散が発生します。
吸音材の外側
大きな音エネルギーとして吸音材に飛び込み、壁に反射して吸音材から出てきた音は、元の音と比べて音エネルギーを失っています。
このように、吸音材を用いることで、音のエネルギーを減衰させ、部屋の残響を打ち消すことができます。音楽制作の現場では、発せられた音が反射することで録音やミックス作業に悪影響を及ぼしかねないため、積極的に部屋の残響を抑えるようにしています。
ですが…
吸音材に防音効果は期待できない
確かに吸音材には、音エネルギーを分散させたり、吸音材の中で分散させた音を迷わせてエネルギーを減衰させるなどの効果はあります。しかし、世間一般で言う防音(遮音)のために吸音材を使うことには、極めて不向きです。
低域の音に対して無力
これは吸音材に限ったことではないですが、防音を謳うアイテムは総じて低域の音に対しては無力です。人の話し声、ピアノの打鍵の音、ベース楽器、改造車のエンジン音など、低域をいっぱい含んだ音は遮ることができません。
防音系アイテムの音エネルギーの減少度合いを示すグラフは、そういうアイテムを扱うサイトで見ることはできますが、先に挙げたような音は、せいぜい半分程度の音エネルギーしか減少させることができず、「(あっ、気持ち音が小さくなったかな…)」と思う程度にしかなりません。低域の音はエネルギー量が大きいため、吸音材という軽い物質では防ぎきれず素通ししてしまいます。
なので、吸音材には音を遮るのに効果的というだけのスペックはありません。そもそも、吸音材自体、そういう使い方をするように作られてはいません。
というわけで、今回は吸音材について語ってみました。
正直なところ、吸音材は私生活ではまず買うことはないでしょう。しかし、楽曲制作をしたり、オーディオ視聴環境を整えるのであれば、購入して部屋の残響を調節するのに役立つでしょう。何より、「音楽の専門家っぽくてテンションが上がる」という気持ちになります。気持ちには、ですが…。
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