生成AIではないもの

皆さん、おはようございます。

生成AIについては、業務の円滑化などの一方、特にイラストや音声では著作権関連のトラブルや、関係者への攻撃などが社会問題となっていたり、直近ではオプトアウト型※の学習をしないように日本国内の業界で声明を上げるなど、大きな動きが見えている感じはします。

※オプトアウトとは

「最初は登録していないが、許可をもらった際に登録する」形式をオプトインと呼ぶのに対し、「最初から登録しているが、不許可とした際に登録から除外する」形式をオプトアウトと呼びます。
オプトアウト型の問題点としては、権利者や決定権がある人が認識しない限り意に反して運用される可能性があること、複数の場所で意に反して用いられている場合に、そのすべての場所に不許可であることを手続きしなければならない点があります。生成AIの学習がオプトアウト式の場合、生成AI学習を許可しないコンテンツが意図せず学習された際に権利者が取り下げを求めない限り、意に反して使われ続ける危険性があります。
そのため、生成AIなどの大規模な学習については、学習データのクリアリティを担保するため、オプトイン形式であるべきという声が上がっています。

話はそれましたが、本題です。
最近だと、AIと生成AIが同じもの…AI=生成AIと認識されるケースがあるようです。
ただ、AI…つまり人工知能自体は、ずっと昔から存在します。
記憶にあるものとしては、ファミコン版ドラゴンクエスト4がAIシステムを積んでいることを売りにしていましたね。味方キャラを個別に操作せず、キャラ自らが意思を持って行動するシステムをAIによる学習システムと謳っていました。
また、将棋やオセロ、チェスと言った対戦型ゲームのCPUの動きを決定するものもAIです。オセロの場合は、次の1手を決めた場合、どれだけの石が増えるか、その後のプレイヤーの行動でその1手を決める前と比べてどれだけ石が増減するかを判断しています。人が考えることと同じように、操作をした結果を特定の評価軸で判断し、その評価点が高い手を選ぶことが、人工知能の動き方につながっていきます。
RPGでは「このモンスターはHPが一番低い味方を狙ってくる」などの個性があったりもします。これは、味方HPを読み、一番低いキャラを標的とするアルゴリズムに従って行動しています。こういった行動パターンの確立も、AIと言えるでしょう。

では生成AIとそうじゃないAIの違いは何なのか

出力結果が成果物の生成かアルゴリズムの出力結果かの違い、入力の指示が曖昧かシステムに合わせて厳格かの違いであると言えます。
例えば、シンセサイザーのアルペジオ(和音を1音ずつばらけさせて弾く)パターンに合わせたコードのパートを作る場合、これまではアルペジエーターに和音を入力し、パターンを選択し、そのパターンに合わせた結果を演奏として出力することになりますが、生成AIの場合、ばらけ方、テンポ、音色などを言葉で指定し、それに従い演奏した結果を音声データとして生成します。
しかしながら、この出力する際に、出力結果となる学習内容をどこから持ってきたのかといった出自が不明なデータを使う可能性があります。「誰誰のこの曲のようにアルペジオを作って」と言った場合、まさに誰誰のこの曲のデータからそのまま抜き出す可能性もあります。このように、引用してはいけない結果を孕みかねない点が、生成AIを使用した制作の大きな懸念となっています。

生成AIに関する流れは、直近では否定的な声が多く聞かれますが、本来はクリエイティブな局面において作業の一助となるゲームチェンジャーとなるはずでした。
しかしながら、法整備が追い付く前に、個人での利用の範疇を大きく逸脱した、他者の著作物を無断学習させた生成物の販売、ディープフェイクなどのデマ動画といった、悪意のある使われ方が問題となり、もはや生成AIの技術そのものに対する嫌悪感を抱いている人も少なくありません。このまま悪用される事例が収まらなければ、クリエイターを妨害するツールとして技術そのものを封印する結論に至ってもおかしくはないでしょう。

少なくとも、無料で使用できるような技術であるべきではないこと、企業が管轄できるオプトイン形式でクリアランスが保証されたデータベースであること、個人レベルでの学習がクラウドに上がらないことなど、著作権の悪用に至る対策を講じられない限り…
そして何より、クリエイターに対する敬意を使用者が持たない限り、生成AIがクリエイティブな世界で活躍するタイミングは来ることが無いでしょう。


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もしも生成AIに手伝わせるとすれば

皆さん、おはようございます。

工具

奇しくも生成AI談議になってしまった昨今の記事更新ですが、生成AIを使用した制作すべてを否定するものではないことは、念のため断りを入れておきます。
現状、生成AIを使用して楽曲自体を作曲・編曲し、生成されたものをそのまま成果物として使用する場合については、著作権上のクリアランスが保証されない以上、導入することはできません。
しかしながら、著作権上のクリアランスが保証されるないし、著作権上のクリアランスの懸念を考慮しなくていい場合については、生成AIを使用することによる制作は、クリエイティブな作業を促進し、著しい効率化をもたらす良い相棒になることは言うまでもありません。

では、どういう状況であれば生成AIを制作に導入したいと思うでしょうか…
それについて、自分が生成AIを導入するのであればこれに使いたい、と言うことを吟味していきたいと思います。

ギターやベースを指示通りに演奏させたデータを作成させる

AIに「この小節でこのコードを、リズムはこんな感じで、サビはこういう感じで」と指定し、指定したものを打ち込みのデータとして生成させることには利用したいと思います。特にギターパートの作成はシミュレーションが難しく、更に入力や微調整の手間が多くなります。そこにこういうパターンでコードに合わせて演奏を想定したデータが生成されれば、あとは細かなニュアンスを微調整するだけになります。
もちろんギターを弾けるのであれば生演奏の方が圧倒的に質が高いですが、キーを変える、テンポを変える、ギターの出音を変えるといった小回りが利かないことが欠点となります。

ドラムパターンを入力し、人間っぽさをプラスする

ドラムはリズムを刻み、楽曲のリズムの根幹を担うという特性上、どうしてもドラムパートを作る場合は単調になりやすいことが欠点です。
しかし、「ゴーストノートをよしなに入れて」「連打は若干走った感じにして」など、微調整を指定することで、繰り返しのパターンを微妙に差分を持たせ、コピペした感を減らすことが可能となります。

リファレンスとなる楽曲から、マスタリングの際のEQ調整などをガイドする

「この楽曲のような質感にしたい」と、リファレンス曲を読み込ませ、現在作業中の楽曲と比較し、差分を文章または表で表したり、差分を補正するようにプラグインに設定させることができれば、ミックスやマスタリングにかかる時間を大きく削減することができると思います。
但し、この作業については生成AIに著作物を読み込ませ学習させるプロセスが発生するため、指定して読み込ませたものだけを使うことが明確に定義されていなければ、実行することは難しいでしょう。
なお、この作業で著作権を保持していない楽曲を読み込ませた場合でも、周波数帯域の分布およびその補正データについては著作権が発生しないため、権利侵害にはならないものと判断できます。

以上が、生成AIを使用するとしたら、ということで、作業を依頼したい内容となります。
いずれにせよ、ドラムやギターのパートをオーディオデータではなく入力用データとして生成させる背景には、微調整が利くなどのメンテナンス性のほか、入力用データそのものには著作権が発生しないため無用なトラブルを回避できることが挙げられます。

生成AIは、クリエイターの助けとなれば最高の相棒となる一方、権利侵害の助長の懸念をそのまま具現化すれば、最悪業界自体に深刻なダメージをもたらす悪魔の道具ともなり得る諸刃の剣です。
しかしながら、頑なに生成AIを使用しない制作を続ければ、それは無用な非効率を選び続けることにもつながります。

生成AIが、クリエイターにとって最高のパートナーになる日が1日も早く到来するために、業界に携わる者という自覚を持って、取り組んでいかなければなりません。


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AIが作曲したら作曲者は誰?

皆さん、おはようございます。

首をかしげるモデル人形

生成AIの技術は、楽曲制作にも徐々に浸透してきています。
ただ、イラストなどと同様例に漏れず、生成AIによる自動作曲が著作権の侵害になる、生成AIによる楽曲制作で作曲家は要らなくなるなど、懸念する内容はあります。
ただ、こういう意見を目にしました。

生成AIも楽曲制作のパートナーであるべきだ

確かに生成AIの技術の進歩は目覚ましく、プロンプトと呼ばれる文章の組み合わせで意図した生成データを生み出すだけでなく、誰かに語り掛けてそれを噛み砕き、その通りの内容を示すなど、人間と遜色ない柔軟性を持ち合わせるようになっています。
しかしながら、生成AIが持つ、学習データに関するクリアランス…つまり、生成AIが成果物をアウトプットするにあたり参照するデータが、合法的に与えられ学習したものなのか、その透明性を問われることが多く、それについては未だに学習データのクリアランスが確保されていないのが現状です。そのため、楽曲制作に生成AIを使用した場合は、販売を認めないなど規約で定めているケースもあります。

ところで…
生成AIも楽曲制作のパートナーであるべきだとは言いますが
では、生成AIが作曲した楽曲は、誰が作曲者となるのでしょうか?

結論から言うと、作曲者のない楽曲が出来上がるという、著作権のバグが発生するような状況になるかと思います。

例えば…
「クライアントから楽曲制作を依頼されたので、生成AIに投げて制作してもらった」
これに対して、作曲者は生成AIに投げた本人という主張があることでしょう。
しかしながら、これはどうでしょうか?

「クライアントから楽曲制作を依頼されたので、自分に師事する弟子に制作してもらった」
これに対して、作曲者が弟子に投げた本人ということが通用するでしょうか?
…ゴーストライター問題よろしく、通用しないと思います。そして、生成AIが作曲したケースについても、ゴーストライターに作曲させた場合と同じです。
それを考えると、生成AIに作曲してもらった楽曲は、作曲のタスクを投げた本人にはなり得ないという結論が導き出せます。もちろん、生成AIはツールなので、生成AIが著作権を主張することはできません。
結果、作曲者の存在しない楽曲が出来上がるということです。

もっとも、楽曲制作を依頼されたから生成AIに投げて作曲するとしても、作曲の依頼を請けるたびに生成AIに投げて、完成したものを納品して…果たしてそれは、作曲家としての本分を全うするものでしょうか。
これでは単なる作業にすぎません。
何よりそこに、本人のアイデンティティはありません。

生成AIは、クリエイティブな仕事を後押しする、それこそこれからの楽曲制作の相棒ともなることでしょう。
しかしながら、無作為に楽曲を食わせて楽曲を生成し、それをもって作曲家を名乗るような、プライドの欠片もない作曲家の量産につながらないことを、願うばかりです。

NRTサウンドでは、楽曲制作のプロセスにおいて、生成AIを一切使用しておりません。
安心安全な完全なるオーダーメイド作品を、提供いたします。


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楽曲制作に生成AIは使用しません

皆さん、おはようございます。

日曜大工

生成AIによるビジネスへの展開は、その拡散速度と言い、完成度と言い、人の想像を上回るほどとなりました。
図解やイラストはもちろん、プログラミングでさえも実行し、成果物を作り、それは本職のプログラマーをも唸らせるほどの完成度となります。

生成AIは、作業を助ける良きビジネスパートナーになるかとは思います。
しかしながら、NRTサウンドは、生成AIによる作編曲プロセスへの介入を行わないことをここに公言いたします。
理由は以下の通りです。

・生成AIによる学習内容が保証されない
・生成AIの使用が、想像力や向上心を委縮させる
・楽曲制作のやりがいが無くなり、単調な作業と化する

生成AIの最大の問題点であり、いわゆる「反AI」を生み出している根源となるのが、生成AIによる無断学習が問題視され、学習内容が保証されないことにあります。気づかない場所で不特定の作品を無断学習し、無断学習した人の作品と同じフレーズが如実に出た作品を出そうものなら、インシデントを起こした事業者となり信頼を失います。全くのブランクで、外部からの学習の一切が無いことを保証できない限り、AIを使用したことに伴う無断学習への懸念が付きまとうことでしょう。
現在、生成AIを用いた作品の取り扱いを禁止しているサイトは、音楽やイラストなどで珍しくはありませんし、生成AIを使用した作品を許容しているショップでも、明確な線引きがされ、生成AI不使用を謳って実際の結果と乖離した場合、アカウント停止などの制裁が行われるケースもあります。

そして、生成AIを使用することで、学習に使用した楽曲が増えれば増えるほど、自分で作る機会は減り、結果として学習に使用した範疇を超える作品を生み出すことができなくなります。ここまでくると最早、楽曲制作ではなく、「餌付け」です。
クリエイターが好む曲調やコード進行などはあり、楽曲をたくさん制作してもそれらは「手癖」として現れ、「似たような曲だなぁ…」と自他ともに思うことはあるでしょう。しかしながら、それでも新しく制作することによる微妙なブレが、新しい表現やモチーフにつながることはあります。
何も生み出さない、餌付けしかできない人物の、何がクリエイターでしょうか。

生成AIは良きパートナーであり、今後のクリエイティブなシーンにとっては不可欠な存在となることは間違いありません。例えば、アニメーションを制作するにしても、これまで人の手で行ってきたシーンA→Bの動きの間の描画補完も、生成AIによって行われることで、現場の負担を大きく軽減することになるだけでなく、背景のアニメーションを加えることによって、よりクオリティの高い作品作りに貢献できると想像するには容易いです。
しかしながら、法整備が行われず、目に余る著作物の無断学習が横行し問題視されている以上、それらがクリエイターに対して実害を与えている現状が是正され、生成AIそのものに出所不明な無断学習という地雷が含まれているリスクが完全に除去されない限り、楽曲制作において生成AIによる作編曲は行わないと、改めて公言する次第です。

良き相棒と手を取るまで、まだ時間がかかりそうです…


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