吸音材に防音効果はあるのか(3)

皆さん、おはようございます。

前回は防音の種類3つを上げて説明しました。
世間一般で言われる「防音」とはおおむね「遮音」であること、遮音をすると遮蔽物内が残響音で飽和してしまうこと、吸音材に遮音効果が殆どないことがわかっていただけたと思います。

理想の防音体制とは

・音が外に漏れないこと
・一次反射音を適切に対処できること
・作業空間に依存する残響が無いこと

防音について考えれば答えを出すのは難しくないでしょう。
音が外に漏れないようにするには、遮音を徹底する必要があります。密度の高い物質で遮蔽しますが、そうなると残響音で飽和してしまいます。
そのため、遮音により室内に留まった残響音を適切に対処する必要があります。そこで、吸音材を使用し、残響音を処理してやる必要があります。

但し、部屋全体を吸音材で囲うことは容易ではありません。吸音材はお世辞にも安いとは言えず、部屋全体に貼り付けるとなると相当高くつきますし、そもそも部屋全体を吸音材で覆いつくすこと自体が非現実的です。であれば、吸音材を配置する場所を絞り込まなければなりません。

適切に配置する場所は、反射エネルギーが最も大きい一次反射音の反射点です。ここで音エネルギーを大きく減衰できれば、部屋内の残響音を効率よく減衰できるはずです。
一次反射音は、モニタースピーカーの正面から背後の壁に向かう反射音だけでなく、側面やモニターの背後から出る音に対しても考慮する必要があります。この反射点に吸音材を置くことで、音の拡散と吸音を狙うことができます。

なお、一次反射音はXY平面的な反射点だけでなく、床や天井にも反射点があります。天井はともかく、床に吸音材を置くわけにはいかないため、カーペットを敷くなど、素材を使って吸音を狙うのが有効でしょう。

一次反射音を解決するだけでもだいぶ違うかとは思います。もちろん、一次反射音の解決だけで残響が解決することはないですが、家具の配置の工夫やカーテンなどである程度解決できるかとは思います。

但し、防音は低域になればなるほどその効果は弱まります。部屋内の残響を調整するには先の方法が有効かもしれませんが、建物の材質や集合住宅の特性など、防音には限度がある場合が多いかと思います。仮に堅牢な環境が整っていても、ミキシングルームのように最初から防音ありきで設計されたものでない限り、重低音の音漏れは避けられません。
防音への意識も大切ですが、深夜に作業を持ち込まないなど、近所迷惑にならない生活リズムでの楽曲制作こそ、防音の最適解なのかもしれません。


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吸音材に防音効果はあるのか(2)

皆さん、おはようございます。

前回に続き、吸音材に防音効果はあるのかについてお話します。
前回は「吸音材にいわゆる防音効果はない」で締めくくりましたが、ここで、防音とは何かを説明していきましょう。

防音には大きく分けて3種類ある

防音には3つの異なる性質があります。
音が外に漏れないようにする「遮音」…世間一般的に防音と呼ばれる内容がこれです。
反響音や残響を吸収し音のエネルギーそのものを減らす「吸音」…前回説明した吸音材が得意とする分野がこれです。
音のエネルギーを細かなベクトルの反響音に分解する「拡散」があります。

遮音は、壁などの遮蔽物を通る際に、音そのものを遮ることで、遮蔽物の外に漏れる音を大きく減衰させます。特に木材やコンクリートなど、密度の高い物質ほど遮音性に優れますが、吸音材やカーテンなどの密度が低く軽い素材については、音のエネルギーが遮蔽物を突き抜けてしまうため、遮音性は低いです。

但し、遮音とは音を遮ると書く通り、遮音性の高い物質は、遮蔽物の外に音を通しにくい代わりに、遮蔽物の内側に反射する音が多くなります。結果として、遮音性の高い環境では、トンネルの内側のような反響音で飽和した状況が起こりやすくなります。
また、密度の高い遮蔽物でも、低音の大きなエネルギーを遮蔽するのは難しく、遮蔽物そのものが振動することによる音の伝搬(つまり振動)までは防ぎきれません。低音をしっかり遮蔽するには、密度の高い物質で、分厚い遮蔽物を作らなければなりません。

吸音は、吸音材や布団、カーテンなどの比較的柔らかい材質の遮蔽物に音が当たった際、音エネルギーの一部が吸音材の振動や吸音材内部で乱反射するなどして減衰することです。
吸音材はスポンジのような素材でできているため、吸音材に飛び込んだ音エネルギーは旧存在そのものを振動させたり、吸音材の繊維にぶつかって細かなエネルギーにしてそれらを乱反射させて相殺することで、反射する音エネルギーを減衰させることができます。

但し、音は周波数が低いほど同じ音量でもエネルギー量が高くなるため、吸音材のような軽い物質では吸音できずに突き抜けてしまいます。吸音材の説明書きには、200Hz以下の低域に対してはほとんど吸音効果がないと記載されています。

拡散とは、細かな凹凸がある物体に音エネルギーが衝突した際、細かな凹凸によってさまざまなベクトルの細かい音エネルギーに分解して反射させるものです。細かな音エネルギーに分解されることにより、一次反射音を低減させることができるだけでなく、吸音材などで吸音しやすくなります。吸音材の表面がギザギザである理由としては、その形状により音エネルギーを拡散させ、吸音させやすくする意味合いもあります。

拡散するためには、吸音材だけでなく、本棚を置くことによる書籍が作り出す凹凸を利用することも有効です。また、拡散を目的としたオプションが販売されていることもあります。
拡散することで吸音させやすくすることもありますが、複雑な残響音が生まれるため、コンサートホールなどでは表面が凹凸の壁面を用いて、コンサートホールの豊かな残響を作ることを狙う場合もあります。

(つづく)


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