もしも生成AIに手伝わせるとすれば

皆さん、おはようございます。

工具

奇しくも生成AI談議になってしまった昨今の記事更新ですが、生成AIを使用した制作すべてを否定するものではないことは、念のため断りを入れておきます。
現状、生成AIを使用して楽曲自体を作曲・編曲し、生成されたものをそのまま成果物として使用する場合については、著作権上のクリアランスが保証されない以上、導入することはできません。
しかしながら、著作権上のクリアランスが保証されるないし、著作権上のクリアランスの懸念を考慮しなくていい場合については、生成AIを使用することによる制作は、クリエイティブな作業を促進し、著しい効率化をもたらす良い相棒になることは言うまでもありません。

では、どういう状況であれば生成AIを制作に導入したいと思うでしょうか…
それについて、自分が生成AIを導入するのであればこれに使いたい、と言うことを吟味していきたいと思います。

ギターやベースを指示通りに演奏させたデータを作成させる

AIに「この小節でこのコードを、リズムはこんな感じで、サビはこういう感じで」と指定し、指定したものを打ち込みのデータとして生成させることには利用したいと思います。特にギターパートの作成はシミュレーションが難しく、更に入力や微調整の手間が多くなります。そこにこういうパターンでコードに合わせて演奏を想定したデータが生成されれば、あとは細かなニュアンスを微調整するだけになります。
もちろんギターを弾けるのであれば生演奏の方が圧倒的に質が高いですが、キーを変える、テンポを変える、ギターの出音を変えるといった小回りが利かないことが欠点となります。

ドラムパターンを入力し、人間っぽさをプラスする

ドラムはリズムを刻み、楽曲のリズムの根幹を担うという特性上、どうしてもドラムパートを作る場合は単調になりやすいことが欠点です。
しかし、「ゴーストノートをよしなに入れて」「連打は若干走った感じにして」など、微調整を指定することで、繰り返しのパターンを微妙に差分を持たせ、コピペした感を減らすことが可能となります。

リファレンスとなる楽曲から、マスタリングの際のEQ調整などをガイドする

「この楽曲のような質感にしたい」と、リファレンス曲を読み込ませ、現在作業中の楽曲と比較し、差分を文章または表で表したり、差分を補正するようにプラグインに設定させることができれば、ミックスやマスタリングにかかる時間を大きく削減することができると思います。
但し、この作業については生成AIに著作物を読み込ませ学習させるプロセスが発生するため、指定して読み込ませたものだけを使うことが明確に定義されていなければ、実行することは難しいでしょう。
なお、この作業で著作権を保持していない楽曲を読み込ませた場合でも、周波数帯域の分布およびその補正データについては著作権が発生しないため、権利侵害にはならないものと判断できます。

以上が、生成AIを使用するとしたら、ということで、作業を依頼したい内容となります。
いずれにせよ、ドラムやギターのパートをオーディオデータではなく入力用データとして生成させる背景には、微調整が利くなどのメンテナンス性のほか、入力用データそのものには著作権が発生しないため無用なトラブルを回避できることが挙げられます。

生成AIは、クリエイターの助けとなれば最高の相棒となる一方、権利侵害の助長の懸念をそのまま具現化すれば、最悪業界自体に深刻なダメージをもたらす悪魔の道具ともなり得る諸刃の剣です。
しかしながら、頑なに生成AIを使用しない制作を続ければ、それは無用な非効率を選び続けることにもつながります。

生成AIが、クリエイターにとって最高のパートナーになる日が1日も早く到来するために、業界に携わる者という自覚を持って、取り組んでいかなければなりません。


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AIより任せた方が楽。

皆さん、おはようございます。

考える人

生成AIはもはや、ビジネスシーンにおいては身近な存在となっていますが、その一方で適さない局面がある、というのは過去にも記事にしてきました。
とりわけ、クリエイティブな局面と言うのは、生成AIに取って代わられると言われることが多いのですが、生成AIの仕組みを考えるほど、実は取って代わられにくいのではと思うことも多くなります。

少し前に、和歌山市で生成AIを使ったご当地キャラの作成が物議を醸しました。
作成に当たっては著作権をクリアしているとして問題はないのですが、生成AIについて熟知していない限り、同じ試みに続けとばかりに突撃したところで、トラブルに首を突っ込んでしまうことになりかねないでしょう。

生成AIを使い、キャラクターを新たに生み出すこと自体は法的問題はありません。
しかしながら、それについては、様々なクリアすべき要件があります。

  • 生成AIに使用している学習データが著作権上の制限をクリアしていること
  • 生成AIがベースとしている学習データベースに違法性がないこと
  • 生成AIの使用目的の範疇で行われていること

特に、生成AIに使用している学習データが著作権上の制限をクリアしていることについては、その状況を揃えることが難しいこと、その状況を揃えることが非効率的であることが挙げられます。
なぜなら、公表することを前提としたイラストを制作するにおいて、生成AIに学習させるために著作権上の制限をクリアしているデータを用意するのであれば、手元に「生成AIへの使用を許諾された素材」があることが必要となります。もし手元に素材が無く、手頃なイラストを学習させれば、たちまち著作権に引っかかりアウトとなります。すでに公表済みで使用可能な過去の素材についても、当時は生成AIへの学習と言った要項はなかったため、新たに許諾を取り直す必要があるでしょう。

だったら、生成AIに学習させても問題ないイラスト素材を作ってもらえばいいんじゃないですか?

その通りです。
ですが、それだったら最初からこういう素材を作ってってプロに頼んだ方が手っ取り早くありませんか?
(「ラクダを前から押さえてくれ」という小話を思い出しました ※閲覧は自己責任で)

結局のところ、手元にAI学習が使用可能な素材が無ければ、生成AIにより新しいイラストを作っても公表できないというジレンマに陥ります。もしこれを検知できないというのであれば、生成AIを使うべきではありません
生成AIを使用したことによって浮いた時間や費用は、トラブル一発で組織の信頼もろとも簡単に消し飛びます。

生成AIは法規制が追い付かず、その存在が世に知れたときには、生成AIに対する嫌悪を煽るようなトラブルが起こり、否定的な見解を持つ人が増えてしまったのは悪手だったと言わざるを得ません。
生成AIは正しく使えば、クリエイターにとって最大の相方となります。創りたいものを1つでも多く創るために作業を効率化するには、その能力は欠かせません。しかしながら、法規制や学習データのクリアランスなど、その課題は未だ残り続けます。

生成AIと敵対しない、生成AIと手を組む、そのためにも、共存できる状況を作るべく、最大限努力しなければなりません。


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なんでできることを他の人にやらせるんですか

皆さん、おはようございます。

懐中時計

ちょっとフランクな感じのアプローチをしてみます。
今回のテーマは、自分ができることをあえて他の人に仕事させるということです。

『動画に使用するBGMを選曲する』

何度目かのお題ではありますが、今回もこれです。
動画に使用するBGMの調達をお願いされましたが、その際、自分でBGMを調達するか、外部に制作を依頼するかの選択肢があると思います。
そして、自分でBGMの調達を検討するでしょう。
理由は簡単です。
自分でBGMを調達した方が、外部にBGMの制作を依頼するよりも、コストを抑えることができます。もちろん、制作依頼に支払う金額です。

では、今回のタイトルに回帰したいと思います。
なんで自分でできることを他の人にやらせる…つまり、BGMの制作を外部に依頼するか、ということですね。

その理由は簡単です。
自分でできることを他の人にやらせることで、自分にしかできないことができるからです。

確かに動画に使用するBGMを自分で調達することは自身でもできるでしょう。楽曲制作を外部に依頼しなくても、目的は達成できるかもしれません。
しかし、楽曲を探し、楽曲の使用条件を熟読し、楽曲を吟味し、その楽曲を選定する…これらの作業には、多くの時間と労力がかかる上、動画用BGMの選曲について責任者の立場の人に承認を得る必要があります。
そしてこの結果、どうなるでしょうか…?

動画に使用するBGMを調達する作業に費やした時間と労力と同じだけ、担当した本人しかできない仕事に注力できる時間的体力的なリソースを失うということです。
人に任せられる作業を人に任せなかったことで、自分にしかできない作業に費やすリソースを失うこととなりました。

もし、動画に使用するBGMを、外部に制作を依頼していたら…責任者にその旨の承認を得て、外部へと受注し、用途に沿ったBGMを受領して完了とできたでしょう。
そしてその間の時間と労力を、その人にしかできない作業に充てることができたでしょう。
大局的に見て、外部に制作を依頼する場合と、自ら作業を行う場合と、果たしてどちらの方が、会社からしてお得だったでしょうか?

楽曲制作に限った話ではないですが、専門的な内容は最初から専門家に依頼した方が、結局のところ安上がりになるケースは多いものです。
専門的な仕事は専門的な人に、そういう風潮が広がることが、クリエイターの土壌を守ることと、自分たちの仕事を円滑に回すことにつながる、Win-Winの状況を築くことにつながるでしょう。


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AI技術を用いてはいけない局面

皆さん、おはようございます。

生成AIを業務に使用するケースは、決して珍しくなくなってきました。
プレゼンテーションを作成するにも、いい塩梅の文面を作るのもAI、AI駆動型開発と言われるように、AIがコーディングするソフトウェア開発現場もあります。

しかしながら、AIを使用するタイミングを誤れば、トラブルを生むことや悪用されることも事実です。現にイラストについては、生成AIを使用して無断学習による生成を行い、それを販売するトラブルは、報じられて久しい状況ですが、この問題は後を絶ちません。

AI技術は確かに便利ではありますが、用いてはいけない局面があります。
それは、AI出力した結果に責任が持てない場合です。

ちょっと前に、生成AIを使ってプロモーション用のポスターを生成し、それを使用したところ、生成AIを使用したことによる矛盾が指摘され、炎上する事案がありました。これについては、モデルを雇って撮影するなどすれば回避することはできましたが、生成AIに仕事を任せることで仕事の結果を素早く提供できるということに固執し、出力結果が正しいのかどうか、それを判断することができなかった…簡単に言えば、専門性のない内容を判断できない人が作ってしまったがために、判断することができず、この事案を招いたと言えるでしょう。
もっとを言えば、本来モデルを使って撮影すべきという判断があったにもかかわらず、生成AIを使えばそんなことしなくても同じだけの成果物が低コストで得られる、だから生成AIを使うべき、と指示された可能性もあったのかもしれません。
最初に上げた、AI駆動型のソフトウェア開発でも、ソースコードが読めない人が作ろうものなら、万が一欠陥があった際に何がいけないのか、どうすれば解決できるのかがわからず、必要以上にCPUリソースやメモリを食いつぶし、エラーを引き起こすモンスターを生み出しかねません。そしてそのモンスターは、その製品を使用する企業などに打撃を与え、場合によっては生命財産に被害を与えるなど、社会問題化しかねません。

NRTサウンドでは、生成AIによる作編曲が可能なツールを一切使用していない、AIフリーの楽曲制作環境を用いています。
ただ、現に生成AIによる作編曲のツールは販売されていますし、それを使用した楽曲制作の講座もあります。それでもなお、生成AIによる作編曲のツールを使用しないのは、生成AIによる学習内容のクリアランスが担保できないためです。簡単に言えば、「生成の背景にある学習内容に著作物を無断使用していないことが証明できない」ということです。
もちろん、「使用していないことが証明できないから有罪」というのは、悪魔の証明でありあってはなりません。しかし、生成AIを使用できる楽曲制作環境を保有していることが明確であれば、万が一AI生成が疑われた時に、トラブルに発展してしまいます。本当に生成AIによる無断学習の利用が無かったとしても、係争中においては受注している案件、これから発注を検討している案件に悪影響が及ぶことは想像するに容易いです。
制作環境に生成AIを用いていないことを証明できれば、万が一AI生成が疑われた場合においても、直ちに生成AIを使用していると疑いを突きつけられることはありません。もちろん、人であっても意図せず既存の著作物に酷似することはありますが、あまりにも酷似しすぎるという結果になる可能性は低く、酷似が疑われたとしてもメロディを変えるなどで対処することが可能です。

生成AIによるAI駆動のクリエイティブについては、著作権をどうするかなどの課題は抱えていますが、そこをクリアすることができれば、制作の効率性を高める…クリエイターが作りたいと思ったものを効率的に手伝ってくれる、良いパートナーとなることは間違いありません。効率的な制作を支援するということは、作りたいものを1つでも多く生み出せるということであり、これはクリエイターからすれば、またとない願いです。
そのためにも、生成AIを使用する環境の整備を進め、不正を許さず、建設的な行動への寄与に最大限、協力しなければならないでしょう。


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