「音圧戦争」って何?

皆さん、おはようございます。

メガホン

音楽を作る人なら一度は耳にしたことがあろうこの単語。

音楽を作ったことがない人でも、ひょんな事で耳にしたり、音楽を聞いて感じたりすることはあるでしょう。

音圧戦争 とは何か

音圧戦争 とは、読んで字のごとく、楽曲を作る際に音圧を挙って上げ合う風潮のことを意味します。

でもこれだけでもわからないので、もう少し噛み砕きます。

CDだけで楽曲を配信する時代は終わり、今や1曲単位で楽曲をダウンロードすることが当たり前に…むしろそちらのほうが主流となりました。そしてそれらは、携帯端末や携帯プレイヤーにダウンロードして聴くようになり、CDで楽しんでいた時代と比べると、1つのバンドやアーティスト、楽曲集に囚われることのない乗り合いの時代を迎えました。

乗り合いになるということは、当然楽曲の音量感…以降これを「音圧」と呼ぶことにします、その音圧がバラバラになるということでもあります。ランダム再生したり、1曲毎に掻い摘んでダウンロードしていれば、当然曲ごとに違う音圧感を受けることになります。そうなると、前後の楽曲で、自ずと音圧の高さで聴き比べる事になります。

音圧≒楽曲の質の高さ

良くも悪くも、同じもしくは似たジャンルの曲を同じ音量で楽曲を聴き比べた時、音圧の高いほうが楽曲の質が高いと判断されることは多いものです。もちろん、クラシックやジャズなど、音圧の高低差が大きい楽曲にも当てはまるとは限りませんが、音圧が高い曲が多いチョイスの中に音圧が低い曲が混ざると、ついついその曲を聴かずに送ってしまうこと、多いのではないでしょうか。

音圧が高い≒しっかり聴こえる

また、音圧が高い曲は、小さな部分もしっかりと聴こえます。音圧を稼ぐプロセスの中で、小さな音量の部分が持ち上げられ、結果として小さな部分がしっかり聴こえるようになります。

ただ、しっかり聴こえること=良いというわけではありません。小さな音がしっかり聴こえるということは、静寂の中に小さな音が聴こえるというバランスを崩すということでもあります。

しかしながら、それでもなお、音圧が高い、しっかりと聴こえる曲は選ばれることが多くなります。なぜなら、携帯端末などで楽曲を聴く環境は、街の雑踏や電車の中など、周りが騒がしい環境が多いためです。たとえ名曲でも、街の雑踏にかき消されれば、何も聴こえません。

音圧を稼ぐことと相性がいい曲が流行っている

一昔前まではJユーロとかパラパラとか言われていたクラブミュージックは、音圧を稼ぎやすく、高い音から低い音までまんべんなく音が出ていてハイファイ(古臭くなく先鋭的のような意味)であることから、邦楽はもちろん、ゲームやアイドル系の曲、番組のBGMなどに使われることが多いものです。簡単に言うと、こういうジャンルの曲って、カッコいいんですよね。なので、使いたがる人が多い、というのはあります。

しかも、低音がバンバン出ていて、高音がシャキシャキ出ているとパワフルでカッコいいと思うことが多く、音圧を稼ぐと積極的にその辺りの音が出てくるので、音圧が上がらない理由が見当たりません。

音圧で争う戦争に反対する人もいる

ここまでをまとめると「楽曲をしっかりと聴いてもらう」理由から、音圧をしっかりと稼ぎ、しっかり聴こえるようにする…そのためにどんどん音圧を稼いでいく風潮が強まりました。

しかし、近年、音圧戦争の風潮に待ったを掛ける人は増えてきました。

音圧を稼ぎすぎることの弊害

ノリが悪くなる

ドラムのアタックやピアノの打鍵などの音量が潰され、バンド全体がアタックを合わせるグルーブ(平たく言えばノリ)を感じにくい楽曲になります。

抑揚が失われのっぺりした音になる

小さな音でさえしっかり聴こえる音量まで引き上げられるため、ボーカルや生楽器の音量差による表情が殺され、大きな音量は無用に押し付けられるため、息苦しい窮屈な仕上がりになります。

耳が疲れ、ストレスが溜まる

聴こえを良くするために、低域や高域を無理に引き上げることで、最初はカッコいいなと思うものの、聴き続ければ耳が疲れてしまいます。

更に無理に聴き続けると、耳を痛めることになり、可聴域を失うことにも繋がります。

音圧を求め、音楽性そのものを失う

これまでを総括するとこの一言に尽きます。

音圧を稼ぐとは、抑揚による表現力や音量による演出力との等価交換です。音圧を稼げば、細かなニュアンスは失われます。

「いいものを聴いて欲しい」…そのために楽曲の良さを音圧稼ぎで殺すことは本末転倒です。

 

というわけで、世間一般で言う「音圧戦争」について語りました。

正直なところ、余程楽曲の音量が小さくない限り、手元の再生機器の音量をあげさえすれば、適正な音量を得ることは可能です。

音量と抑揚の均衡点を楽曲制作で探るのは難しいもの。

だけど、聴く側からすれば、その均衡点を求めるのは遥かに簡単です。

抑揚がしっかりしている曲を、小さな音もしっかり聴こえる環境で、適切な音量まで上げればいいだけの話ですから。

音圧戦争が起こる気持ちもわかります。しかしそれは、「音楽をより良い環境で楽しんでほしい」という、制作者からのメッセージが含まれているからではないでしょうか。

そして快適に音楽に触れる環境や時間を手に入れること…それこそが音圧戦争を脱するために必要であり、今の時代に求められているのではないでしょうか。

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